遺伝(3) 交雑-F1の観察-F2の観察
ショウジョウバエを用いて一遺伝子雑種の交雑実験を行い、メンデルの法則(「優性の法則」「分離の法則」)について理解を深める。
概要
キイロショウジョウバエの野生型 Wild Type(+)は、黄褐色の体色をしている。ここでは、突然変異体である黒檀色の体色 ebony(e)と野生型を用いて形質がどのように遺伝するかを確かめる。
実験開始・・・親(P)の交雑 (Wild Type×ebony)
↓
↓ ・・・生活史(卵、幼虫、蛹など)の観察
↓
14日目 ・・・子(F1)の観察とカウント、およびF1同士の交雑
↓
↓ ・・・生活史の観察
↓
28日目 ・・・孫(F2)の観察とカウント、および外部形態の観察
未交尾メス(Virgin)を集める
- 各班が実験を行うためには多くのハエが必要なので、入手したハエ(Wild Typeとebony)をそれぞれ培養し、数を増やす。
- 実験の開始には未交尾のメスが必要である。羽化後、約8時間は、雌雄が同じビンの中にいても未成熟のため交尾をしないので、実験開始日の2、3日前から、羽化後8時間以内のメスを集めておく。
- 同様にオスも別ビンに集めておき、いよいよ実験開始である。
実験手順
- 初日・・親(P)の交雑
野生型 Wild Typeのオス5,6匹と黒檀体色 ebonyのメス4,5匹、そして新しいエサの入った飼育ビンを用意する。(もちろんWild
Typeとebonyは逆でもよい)
- オスの入ったビンから新しい飼育ビンにオスのハエを移す。
- 次にメスの入ったビンからオスが入っている新しい飼育ビンにメスのハエを移す。
- ラベルを書いて飼育ビンにはり、恒温器に入れる。なお、Wild Typeの遺伝子型を[++]、ebonyの遺伝子型を[ee]と表す。
□月△日(○)
オス メス
++ × ee
__組 __班
|
- 2-13日目
親(P)の交雑後、培地の上に産卵を始めるので、2、3日で卵の数が十分になったら、親を追い出す。
- 卵-幼虫-蛹と成長する過程を毎日観察し、記録をつける。
- 14日目・・F1の観察と計数
- 約2週間で雑種第一代(F1)が成虫になるので、全てのハエを空ビンに移し、少量の麻酔薬(エーテル)を注入して麻痺させる。
- 麻酔が醒める前に白いタイルの上に乗せ、形質(体色が黄褐色か黒檀色か)を調べ、雌雄を選別し、それぞれの数をカウントする。
- F1の交雑
麻痺したF1の中からオス5,6匹とメス4,5匹を選び、新しい飼育ビンに入れ、麻酔が醒めるのを待つ。このとき、飼育ビンは寝かせておき、ハエが培地面につかないように気をつける。
□月△日(○)
F1オス F1メス
+e × +e
__組 __班
|
- ラベルを書いて飼育ビンにはり、恒温器に入れる。なお、F1の遺伝子型は[+e]である。
- 15-27日目
- 雑種第一代(F1)の交雑後、2、3日で卵の数が十分になったら、F1を追い出す。
- 卵-幼虫-蛹と成長する過程を毎日観察し、記録をつける。
- 28日目・・F2の観察と計数
- F1の交雑後、約2週間で雑種第二代(F2)が成虫になるので、全てのハエを空ビンに移し、麻酔薬(エーテル)を注入して麻痺させる。(このときは強めに麻酔をかけてよい)
- 麻酔が醒める前に白いタイルの上に乗せ、形質(体色が黄褐色か黒檀色か)を調べ、雌雄を選別し、それぞれの数をカウントする。
観察結果
F1の計数(形質はすべて野生型(+)である)
組 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
合計 |
メス♀ |
95 |
54 |
90 |
121 |
44 |
109 |
513 |
オス♂ |
138 |
65 |
95 |
144 |
39 |
118 |
599 |
F2の計数
組 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
小計 |
合計 |
野生型
(+) |
メス♀ |
79 |
92 |
36 |
100 |
115 |
65 |
487 |
1184 |
オス♂ |
104 |
146 |
59 |
121 |
169 |
98 |
697 |
ebony |
メス♀ |
7 |
43 |
26 |
12 |
28 |
16 |
132 |
328 |
オス♂ |
16 |
73 |
31 |
21 |
33 |
22 |
196 |
考察
- この実験に使った親ハエの野生型 Wild Typeの遺伝子型を[++]と表し、黒檀体色 ebonyの遺伝子型を[ee]と表すと、それぞれ配偶子は[+]、[e]であり、これらをかけあわせたF1の遺伝子型はすべて
[+e] となる。
「優性の法則」によれば、雑種第一代(F1)では優性形質のみが現れ、劣性形質は隠れる。実験でもF1の見た目(表現型)はすべて野生型であったので、[+]が優性形質であることが確認できる。
- F1は、[+] と [e] の2種類の配偶子を同数つくる。よって、F1どうしを交配させた場合、[++]、[+e]、[e+]、[ee] の4通りの組合せが起きる。2番目と3番目は同じ遺伝子型なので、雑種第二代(F2)の遺伝子型の分離比は、
[++]:[+e]:[ee]=1:2:1 となる。
また、[++]と[+e]の表現型はともに野生型であるので、表現型の分離比は、
[野生型]:[ebony]=3:1 になるはずである。
- メスとオスが同数でなく、オスがやや多くなった原因を考えてみよう。
- F2で、野生型:ebony=3:1にならなかった原因を考えてみよう。
- F2の結果から導き出されたメンデルの法則は何だろうか。
分離の法則
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メス:オス= 1:1.2