遺伝(1) ショウジョウバエの生活史
ショウジョウバエの生態などを知り、遺伝の実験材料として使われる理由を学ぼう。
ショウジョウバエの特徴
- ショウジョウバエは完全変態の昆虫である。
卵 → 一令幼虫・二令幼虫・三令幼虫 → さなぎ → 成虫
- 発生段階は、上記の四つに分けられ、それぞれの発生段階に必要な期間は、温度・培地・幼虫密度などにより著しく変わる。
- 15℃~30℃くらいの範囲で飼育できるが、25℃あたりが最適温度で、一世代に要する期間も短くなる。
- 30℃を越えると卵がふ化しにくくなる。15℃以下では、幼虫の成長速度、成熟、産卵数などが低下し、成虫が不揃いになる。
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20℃の場合 |
25℃の場合 |
卵 → 幼虫 → さなぎ |
8日 |
5日 |
さなぎ → 成虫 |
6日 |
4日 |
- メスは産卵を始めると、約一週間は、1日50~80個ずつ産卵する。未交尾のメスも産卵するが、未受精卵なのでふ化しない。
- 暗黒でも、交尾や産卵をするが、ショウジョウバエの日周期活動は薄暮型であり、日没前数時間の活動が活発である。
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の生活史
交配実験材料としてのショウジョウバエの利点
- 飼育が容易である。
エサ作りが簡単、管ビンで系統保存できる。計画的に管理が可能である。
- 世代が短い。
25℃で約10日くらいであるので、2週ごとに実験を行うとちょうどよく、生徒実験の予定がたてやすい。
- 産卵数が多い。
1日平均30~50個ほど産卵する。
- 顕著な突然変異が多く保存されている。
- 染色体数が少ない。 2n=8
生徒が描いた染色体地図 |
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飼育・観察上の注意
- なるべく最適の温度条件を保つように飼育する。
温度の高いところや低いところ、直射日光に当たる場所に置かないようにする。温度の変化によってビン内面に水滴ができ、ハエが付着して逃げられなくなることがあるためである。
- 飼育ビンを持ち運ぶときは、保温とビンの破損に注意する。
- エサにカビが生えたり、腐敗すると幼虫は死滅することがあるので、カビの胞子や雑菌が入らないように細心の注意を払う。
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