アルコール発酵(ドライイースト)
生物の中には酸素を必要としない呼吸を行うものもいる(これを嫌気呼吸という)。酵母菌もそのひとつで、アルコール発酵と呼ばれる反応過程でエネルギーを作り出している。
この実験では、この反応過程で生成する物質を調べ、温度による反応速度の違いを比較することで、アルコール発酵の過程について理解を深める。
準備
- キューネの発酵管、ドライイースト(乾燥酵母)、スクロース水溶液、10%水酸化ナトリウム水溶液

方法
- 酵母(ドライイースト)を40℃の湯に5%の割合で溶かす。
- 湯で溶かした酵母の液12mlに、スクロース溶液12mlを加え、発酵液をつくる。
- 発酵液をキューネの発酵管に入れ、管の先端まで入るように空気を抜く。
(空気を抜きながら少しずつ入れる)

- キューネ発酵管を40℃の温水を入れたビーカーにつけ、1分ごとにキューネの発酵管の目盛りを読んで発生する気体の体積を測定する。 (発酵液があふれないように、時々ピペットで排出する)
- 気体の量が10mlに達したら 、溶液の臭い、味を調べる。

- 測定と味見が終了したら、キューネに発酵管に10%水酸化ナトリウム溶液を2ml加え、管の口を指でふさいで管を倒してよく混ぜ、指先の感触を調べる。

- 氷を加えた冷水を入れたビーカーを用意し、上記と同様の実験を行う。
結果
- 気体の発生量の記録(例)
時間(分) |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
温水 40℃ |
- |
0.30 |
1.10 |
3.70 |
6.10 |
7.40 |
8.60 |
9.60 |
× |
× |
× |
冷水 8 ℃ |
- |
- |
- |
0.20 |
0.30 |
0.40 |
0.55 |
0.70 |
0.85 |
1.10 |
1.20 |
- 発酵した溶液の臭い
甘酒の臭い、パンの臭いなど
- 発酵した溶液の味
甘酒の味、アルコールの味など
酵母菌のアルコール発酵は、パン(小麦)の製造や日本酒(米)、ワイン(ブドウ果汁)、ビール・ウイスキー(麦芽)などの酒の製造に古くから使われている。
- 10%水酸化ナトリウム溶液を加えたときの指先の感触
指が吸いこまれる感触がある。発生した気体が溶液に溶けて、キューネの発酵管ないの圧力が下がったためである。
考察
- 結果1をグラフにしてみよう。
- 温度による反応速度の違いから、何がわかりますか。
温度が高いほど反応は盛んである。ただし、あまり高温になると、酵母菌が死んでしまうので30℃?40℃程度がもっとも効率がよいと考えられる。
- 水酸化ナトリウム溶液は二酸化炭素をよく溶かす性質があります。
(CO2 + 2NaOH → Na2CO3 + H2O)
このことから、発生した気体は何だと考えられますか。
二酸化炭素
- 上の気体の他に、発生した物質は何でしょう。
エチルアルコール(エタノール)
- アルコール発酵の化学反応式を書いてみよう。
C6H12O6 → C2H6O + CO2
なお、エタノール C2H6O
は C2H5OH
と記述する場合もある