原形質分離の観察(サツキの花弁)
植物の細胞膜がもつ透過性について、低張液(純水)や高張液(スクロース溶液)に浸してその様子を観察し、浸透圧について理解を深める。
材料と準備
サツキの花弁、純水、スクロース溶液(15%)
- ※サツキの花弁の他、葉の裏が赤いユキノシタ・アカタマネギのりん葉・ムラサキツユクサのおしべの毛・ヤブカラシの茎の皮などが使えます。
方法
- シャーレに純水と15%スクロース溶液を入れる。
- サツキの花弁を手でちぎり、切り口の薄い部分を切り取り純水とスクロース溶液にそれぞれ10分ほど浸す。
- スライドガラスに純水に浸けておいた材料を取り、純粋で封入して150倍程度で検鏡する。その様子をスケッチする。
- 次にスクロース溶液に浸けておいた材料を同じ溶液で封入して150倍程度で検鏡する。その様子をスケッチする。
- スケッチが終わったらろ紙でスクロース溶液を吸い取りピペットで純水を加え、その変化を観察する。(カバーガラスの一端にろ紙を置き、反対側から純水をたらすとうまくいく)

スクロース溶液に浸した花弁
ヤブカラシの茎の皮の例
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純水に浸したもの |
スクロース溶液に浸したもの |
考察
- 純水に浸した細胞はどのような状態になりましたか。
細胞質が大きく膨らみ細胞の容積が増えたようになる。色もやや薄くなる。
- スクロース溶液に浸した細胞で見られる現象を何と言いますか。
原形質分離
- この現象はなぜ起こるのか考えてみよう。
浸透圧によって細胞内の水が外に出るため細胞質は収縮するが、植物の場合細胞壁は収縮しないので細胞膜と細胞壁が分離してしまう。
- 最後の操作で純水を加えるとどうなりましたか。
細胞膜がもとの元の状態にもどる
- 細胞壁がない動物細胞で実験をするとどうなるか考えてみよう。
- 水が細胞内に入る液を低張液、水が細胞外に出る液を高張液と言います。身の回りでこのように浸透圧によって起きるできごとを調べてみよう。
発展
- 異なる濃度のスクロース溶液を使って実験を行う。
(例:1%、3%、5%、10%、15%、20%)
- それぞれの濃度で原形質分離が起きている細胞の数を数え、分離が起きる濃度およびそのときの浸透圧を求めることもできる。
参考資料
- 右のグラフは,植物の細胞をいろいろな濃度のスクロース溶液に浸したときの細胞の容積と浸透圧の関係を示した例である。

- 図中の曲線ABCDは「浸透圧」を示している。
- 図中の曲線DEFは細胞膜が外に膨れようとする圧力、「膨圧」である。すると、この細胞の吸水力は、
浸透圧-膨圧
で求められる。
- A-B(G-F)間では原形質分離が起きている。この細胞は浸透圧が10気圧を越えると分離が起きることになる。
- D点は、この細胞を水に浸したときである。このとき
浸透圧=膨圧
および 吸水力=0
である。
- ある水溶液の浸透圧
y[気圧]
はモル濃度x[mol/L]
に比例し,温度が20[℃]
のときy=24x
の関係式が成立することが知られている。